2013年07月27日

『クロス・マネジ』 〜幸福な作品では?〜

 『週刊少年ジャンプ』今週号で終了した『クロス・マネジ』(作:KAITO)について締め括っておきましょうか。


 元サッカー部員の男子・櫻井玄哲がマネージャーを務める藤丘高校女子ラクロス部は春のティーンズマッチで強豪・蝶蘭女学院相手に奮戦するも敗れてしまいました。悔し涙に暮れる一同。
 季節は流れて秋の大会、強化なった豊口深空以下藤丘高校の面々は決勝戦で再び蝶蘭女学院に挑みます。試合開始前、蝶蘭のエース・茅原和峯は櫻井に問います。
「今、楽しい?」
 満面の笑み。それが櫻井の答えでした。


 …こんな感じで物語は終わりました。
 総括してみると負傷してサッカーを諦め失意のどん底にあった櫻井が嫌々ながら女子ラクロス部のマネージャーを引き受け、やがて深空の情熱にほだされてマネージャー業に本気で取り組み、チームの育成に喜びを見出すというお話だったわけでよくまとまっていたと思います。
 本作を少年誌のスポーツものと捉えると物足りなさは否めません。ラクロスという競技の概要が読者に示されたのが第10話あたり、単行本2巻に入ってから。これはやはり遅すぎました。仮にラクロスがドラマの背景に過ぎなかったにしても櫻井や深空が何のために何をしているのか不明瞭で感情移入しにくい前半になってしまいました。
 しかしその辺はストーリー後半になって取材を深めたのか改善されグッと読みやすくなりました。前半でただただ猥雑な印象だったチームメイトたちも後半一人一人の掘り下げに成功しておりドラマに深みが生まれています。対蝶蘭戦が始まってからは作者がやりたかった事を全投入した感じで名場面のオンパレードでした。

 片羽が好きだったのはこの辺。蝶蘭戦後半に深空達を送り出す櫻井。
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 作者は最初からこのシーンがクライマックスの映像として頭にあったのではないでしょうか。
 この後の「見てて」の回も良かったんですけど、私はこちらが好きだな。

 あと同じ回の斎賀那智
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 斎賀は強くて見場も良い基本取っ付きやすいキャラですが、櫻井に対してガサツに振舞いつつも徐々に深める信頼そしてほのかな恋愛感情という人間性の部分も良く描けていたと思います。
 櫻井や深空や和峯は作者が努力して考えて描いている感がありますが、この子は作者の中で自然に動いてますね。KAITO先生の次回作、主人公は斎賀が良いな。

 何だか勝手に気になって注目して参りました『クロス・マネジ』ですが、第1話で「おっ!?」と引き込まれ、その後の展開を読んでいって「大丈夫かいなこれ?」と首を傾げてたら後半になって調子を上げ、終盤に渾身の名場面が出てきて綺麗にまとめ上げられた感じですね。短いながらも作者が描きたかった事は全部描き尽くして爽やかに終わって行けた幸福な作品だったのではないでしょうか。


posted by 片羽國雄 at 03:52| Comment(0) | 漫画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月19日

『クロス・マネジ』 〜作家の闘志というもの〜

 久方ぶりに『週刊少年ジャンプ』話。片羽的にはネウロ同様通好みの中堅作品と踏んでいた『暗殺教室』はすっかりジャンプの顔になってしまいました。戦闘能力には乏しい語り部的主人公の渚が防衛省の送り込んできた暴力教官と決闘して勝利するというまさかの大活躍というか覚醒で物語は新たな局面に差し掛かったと思われます。

 さて本題は昨年秋から連載の『クロス・マネジ』(作:KAITO)ですが豊口深空以下藤丘高校女子ラクロス部の面々は現在ティーンズマッチ決勝大会で強豪・蝶蘭女学院との決戦の最中です。とにかくラクロスを楽しもうというスタンスの深空たちは男子マネージャー櫻井玄哲(こちらが主人公!)の指導下、各自の長所を伸ばす形で成長してきました。しかし冷酷な勝利至上主義で経験も圧倒的に豊富な蝶蘭女学院の前に策が一つ一つ封じられ先制点を奪われてしまい………という展開です。

 片羽、ジャンプの掲載順から作品の質を論じることはしませんが作品人気の指標としては冷酷に受け止めなければならないわけで、長らくテールエンダーを務めることとなった『クロス・マネジ』もおそらく現在の蝶蘭女学院戦をクライマックスに単行本4巻で物語を終えて行くと思われます。例えるならば『アイシールド21』が最初の対戦で大敗した王城ホワイトナイツと進さんにとりあえず一矢報いて終わってしまうようなもんでしょうか。不人気の要因としてはまず少年誌なのに女性誌的な絵柄、そしてスポーツものなのに題材の競技に対する掘り下げ不足と容易に指摘してしまえるのが残念です。

 しかしながら連載を見ているとこのKAITOという作者がまだ気持ちの上では負けていないというか、蝶蘭女学院戦も一手一手丹念に展開を考えながらこの物語をなんとか自分の気の済むように描ききってやろうという真摯さや熱さは伝わってきます。深空と同様、作者が苦戦を楽しんでいるフシがありますね。
 さらに言えば作者の描きたかったのがラクロスよりも櫻井と深空のドラマと考えれば本作は与えられた使命を全うしつつあるわけで、単行本4巻という尺も適切なのかも知れません。櫻井と同様、作者も案外冷静に物語を結末に向けて運んでいるんじゃないでしょうか。短い物語になるとしても綺麗に有終の美を飾って欲しいものです。

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この見事な笑顔を見よ!
少年たちにはこの良さがわからなかったか?


 実のところ片羽、『クロス・マネジ』を読んでいて想起したのがフジテレビの1996年のドラマ『白線流し』です。このドラマの第一話、全日制の高校生の酒井美紀が教室の机の星座の落書きを見てそれを彫った定時制の長瀬智也に興味を持ち、やがて互いに魅かれていくという独創的でロマンチックな幕開けでした。しかしその後は仲間たちも交えた陳腐で糞真面目な青春群像劇に堕してしまいます(それでも何故か続編は沢山作られた)。なので片羽、同作の脚本家・信本敬子も当時全然評価していませんでした。
 しかしそんな信本敬子が2年後に世に送り出すのが『カウボーイ・ビバップ』ですよ。あのスタイリッシュでハードボイルドなSFアニメの快作ですよ。当時『白線流し』がどうやったら『カウボーイ・ビバップ』に化けるのかと驚きましたが、信本敬子が本当に作りたかった作品が『カウボーイ・ビバップ』で『白線流し』は通過点、実績作りのためのお仕事だったと考えればしっくり来ますね………あくまで憶測ですが。
 『クロス・マネジ』も魅力的な第一話を持つ青春ドラマなのでこれが『白線流し』だとすればKAITOは遠からず『カウボーイ・ビバップ』的な大作をものにするんじゃないかと片羽勝手に期待しとるわけであります。 
posted by 片羽國雄 at 16:40| Comment(0) | 漫画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年10月03日

『クロス・マネジ』〜ラブコメ?いやいやカッコイイとは、こういうことさ〜

 『週刊少年ジャンプ』回が続きますが先々週からの新連載『クロス・マネジ』(作:KAITOについてどうしても語りたいので皆様お付き合い下さい。
 いやここ半年ぐらいのジャンプ、ラブコメばかり増殖して読むところが少なくなってましたよね。最近になって編集部がさすがに過ちに気が付いたのか『暗殺教室』だの『烈!!!伊達先パイ』だのを投入してくれて読みやすくなったんですけど、ここへ来て出現した『クロス・マネジ』には当初「まだ懲りてないのか」と呆れるばかりでした。連載開始号の表紙と巻頭カラーも当然飛ばして『暗殺教室』と『ONE PIECE』を読もうとしたのですが嫌でも目に入って来てしまった本作のページに片羽は拒否反応が……………何故か起きない。ラブコメにありがちなトーン多用のアニメ調でなくペンと筆で描かれた漫画の絵。主人公の男子は学ランを着たマトモそうな奴。ビジュアル的にはOKです。では読んでみましょう。
 高校2年生の櫻井(下の名前は未出)は足の故障でサッカー部を退部し、失意の中新たな部活動を探しています。とりあえず文化部の体験入部を転々とするのですがどの部も今一つピンと来ません。
 そんなある日、櫻井は河川敷の鉄道ガード下で一人ラクロスの壁打ち特訓をする小柄な同級生・豊口深空(みそら)と知り合うのですが、深空のあまりの下手さを見かねて球技経験者としてささやかな指導を行います。おかげでとりあえず壁打ちが上手にできるようになった深空はいたく感動し、櫻井を女子ラクロス部に勧誘してきます。
 男子ですから当然拒否する櫻井ですが、ならばマネージャーになってくれとせがむ深空。これも櫻井は拒否しますがしつこく迫る深空と押し合いへし合いしているうちに深空の胸を鷲掴み。これが負い目となってマネージャーを引き受けざるを得なくなりました。
 櫻井はサッカーの道を断たれて以来何事にも情熱が持てず、まして女子運動部の男子マネージャーなどやる気ゼロです。しかし深空の熱意に徐々にほだされ、また女子ラクロス部の駄目な運営を見かねて仕方なしに世話を焼き始めました。…というのが今週第3話までのお話です。
 女性に囲まれる男性主人公という一見ありふれたオタク受け狙いの人物配置ですが、本作は櫻井のキャラクターが秀逸です。夢を絶たれて醒めた態度を基調としながらも胸の奥に熱さがあり毎回深空の心意気に応えて動き出す。しかしそこでも血気にはやるわけではなく終始冷静に行動して好ましい結果を出す。実に一筋縄で行かない感じで深みがあってカッコ良いのです。見た目の第一印象を「マトモそうな奴」と前述しましたが、もっと言えば『動物のお医者さん』のハムテル的な老成した雰囲気というべきでしょうか。アラフォーの片羽の目線かも知れませんが、ジャンプ読者の少年たちもこのような男を理想にして頑張って欲しいと願って止みません。
 さて女性陣についても触れておかねばならんのですが、正直ラブコメエロコメを期待しているとガッカリでしょうね。女子運動部の男子マネージャだから更衣室でドッキリのシチュエーションは当然出てくるのですがどうにもエロくないのです。おやと思って調べたら作者のKAITOって女性でした。なるほど。
 片羽としては『クロス・マネジ』、無理にエロ画を見せなくてもスポーツ青春ものとして人物描写の面白さで押して行ける作品だと思っています。熱血少女を支えるクールな大人の男(高校生だけど)。是非とも長期連載で楽しませて欲しいものです。
posted by 片羽國雄 at 00:46| Comment(0) | 漫画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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