超久々のミニカー記事です。
V8を称えて景気よく行きましょう!V8!V8!

グリーンライト
1/43 エレノア(1973年型フォード・マスタング・マッハ1)
Greenlight 1/43 1973 Ford Mustang Mach 1 "Eleanor"
というわけで今回お披露目するのはブルーディスティニーよりもフェラーリF92Aよりもさらに以前の片羽心のマシン、Greenlightの1/43スケール「エレノア」です。
Eleanorが何のことかわからない方のために説明いたしますと1974年公開のアメリカ映画『バニシングin60″』(原題:GONE IN 60 SECONDS)に登場し数十台のパトカー相手に壮絶な逃走劇を演じた黄色のフォード・マスタングです。



日本での発売は昨年11月でした。
3,000円弱だったかと。
『バニシングin60″』Wikipedia
『バニシングin60″』という映画、片羽が初めて観たのは中学生の頃『月曜ロードショー』でだったのですがこの作品と出会ったばかりに片羽は映画ファンになり、また同時にミニカー片手に自分が主人公の冒険活劇を妄想する中二病患者と化して今に至るという個人的に記念すべき一本です。




前後左右。
パッと見ボッテリしたプロポーションに見えましたが
こうやってガン見するとそう悪くない不思議。
映画用に原車マッハ1からあちこち変更してありますので
このあと各部を見て行きましょう。
舞台はカリフォルニア。主人公ペースは表向き自動車保険の調査員ですが実は凄腕の自動車窃盗団の頭目です。ペース一味にかかるとどんな車も60秒で盗まれて中古市場に売り飛ばされてしまいます。
ある日ペース一味に南米の大富豪から大仕事の依頼が入ります。一週間で高級車48台を盗んで揃えてくれというのです。無理めの期日と台数にペース一味は東奔西走して車を盗みまくります。

フロントマスク。
オリジナルのマッハ1と少し違う面構え。
チンスポイラーはありません。

ボンネットには特徴的な黒のストライプ。海苔のようです。
両脇のノブ(?)はモールドがなく丸い塗装だけです。残念。
マッハ1と違ってエアスクープはありません。
そのうち盗んだ車の一台から大量の麻薬が出てきます。ペースはトラブルは御免と麻薬を車ごと焼却してしまうのですが、麻薬を売りたがっていた仲間はペースを恨んで自動車窃盗の情報を警察に密告します。
折しも48台の大仕事の最後の一台、仲間内の符牒で「エレノア」と呼んで狙いをつけていた黄色のマスタングを盗み出すペースですが、現場には密告により覆面パトカーが張り込んでいました。

タイヤはこんな感じ。
最後の大ジャンプ前のフルブレーキングで
大写しになる左フロントです。
私はこの映画でグッドイヤーという企業の存在を知りました。

リヤエンド。
「ナンバーはカリフォルニア、614-HSO」ですね
上半分まで黒く塗ってあるのが本車最大の特徴。
黒い部分は長年別パネルかと思っていましたが
DVD見直したらどうも塗ってあるだけのようでした。
リヤスポイラーは無し。チンスポイラーもですが
ダメージ表現を施す上でボロリともげる
スポイラー類は邪魔だったんでしょうね。
ペースはエレノアを急発進させ覆面パトカーを押しのけて逃走を開始します。数十台のパトカーが群れをなして追いすがりあるいは立ちふさがる中、傷だらけになって走り続けるエレノア。果たしてペースの運命やいかに。




ミニチャンプスのマッハ1との比較。
フロントマスクとボンネットとリヤエンドの
変更がよくわかります。
ミニカーとしてもプロポーションはそんなに
違わないのですが、エレノアはサイドの
ストライプがないので間延びして見えるのかも
知れませんね。
あとミニチャンプスの前輪がちょっと沈んでいるので……
………と『バニシングin60″』のあらすじを説明するとこんな感じでカーアクション映画の金字塔とされているのですが、映画としては極めて特異な作りで脚本ははっきり言って欠陥品です。
90分の尺の後半はまるまるエレノアがパトカー軍団に追われ続けるドキュメンタリータッチのカースタント映像で起承転結の構成を大きく逸脱しており、登場人物の掘り下げは全編を通じて希薄で変化も成長もありません。
ネタバレ込みで言ってしまえば
「自動車泥棒が警察に追いかけられたけど逃げ切りました」
ただそれだけのお話なのです。こんな話どこのシナリオ教室の初級クラスに持って行っても先生に怒られます。映画として冷静に評価するなら30点。

このミニカーを手に取られた方は全員同感だと思われますが
エレノアってこんな色でしたっけ?
京商1/64と比べると………弁護できんわこりゃ。
ミニチャンプスやオートアートや京商のマッハ1の黄色を
長年見慣れていたから違和感が生じるのかも知れませんが、
DVDの画面をどう見てもやはりもうちょっと
オレンジイエローのような気がします。
再販や1/18や1/64での修正に期待しましょう!
(いやーやってくれると信じてますよ)
だけど、100点。
新車を含む100台近い車を堂々の市街地ロケで華麗に走らせ容赦なく壊すサービス精神が貧弱すぎるストーリーを補って「大いに許せる」作品に仕上がっているのです。そもそも車好きの監督が私費を投じ、ハナっからカースタントを見せるためにこしらえた映画ですから尺の半分がカーチェイスで何ら問題ありません。

先輩『ブリット』の1968年型マスタング(ミニチャンプス製)と。
片や刑事の愛車、片や凶状持ちの盗難車。

『ブルース・ブラザース』のブルースモビル(コーギー製)と。
衆を恃んで襲い来る警察をものともせず走り抜いた両雄に
中学生の片羽は不屈の魂というものを教えられたのです。
人物描写も深くはありませんが前半で主人公ペースが車のプロで犯罪にも独自のポリシーを持つスマートな男であることは描かれており最低限の感情移入は可能です。だって後半を観ながら「逃げろ!逃げろ!ああ〜ぶつかっちゃったよ!」って普通にハラハラドキドキできますもん(ただし前半の人物描写があと一匙足りなかったら本当に単なるカースタントショー映像に堕していたかも知れないとは思います)。
構成や人物描写が常識的に行なわれたリメイク作『60セカンズ』がなんだか堅苦しかったことを考えると『バニシングin60″』の魅力は破綻寸前の際立った個性だったんでしょうね。

1978年型ダッジ・モナコ ポリスカー
カリフォルニア・ハイウェイ・パトロール(NEO製)と。
冒頭の特撮写真に登場してもらったのですが
年式的に無理がありました。もっと言えば劇中で追跡の主力は
CHPよりもLAPDだったような。
LAPDのミニカーは意外と見かけないのでこれもGreenLigntに
期待しましょう。
映画というものをマスで売りたければ『バニシングin60″』の制作スタンスを真似してはいけないとはわかっているのですが、一本で良いからこういう風に自分の趣味嗜好を貫いた作品を作って結果適当に売れて適当に後世まで語り継がれたら物凄い幸福だろうなと思います。