元サッカー部員の男子・櫻井玄哲がマネージャーを務める藤丘高校女子ラクロス部は春のティーンズマッチで強豪・蝶蘭女学院相手に奮戦するも敗れてしまいました。悔し涙に暮れる一同。
季節は流れて秋の大会、強化なった豊口深空以下藤丘高校の面々は決勝戦で再び蝶蘭女学院に挑みます。試合開始前、蝶蘭のエース・茅原和峯は櫻井に問います。
「今、楽しい?」
満面の笑み。それが櫻井の答えでした。
…こんな感じで物語は終わりました。
総括してみると負傷してサッカーを諦め失意のどん底にあった櫻井が嫌々ながら女子ラクロス部のマネージャーを引き受け、やがて深空の情熱にほだされてマネージャー業に本気で取り組み、チームの育成に喜びを見出すというお話だったわけでよくまとまっていたと思います。
本作を少年誌のスポーツものと捉えると物足りなさは否めません。ラクロスという競技の概要が読者に示されたのが第10話あたり、単行本2巻に入ってから。これはやはり遅すぎました。仮にラクロスがドラマの背景に過ぎなかったにしても櫻井や深空が何のために何をしているのか不明瞭で感情移入しにくい前半になってしまいました。
しかしその辺はストーリー後半になって取材を深めたのか改善されグッと読みやすくなりました。前半でただただ猥雑な印象だったチームメイトたちも後半一人一人の掘り下げに成功しておりドラマに深みが生まれています。対蝶蘭戦が始まってからは作者がやりたかった事を全投入した感じで名場面のオンパレードでした。
片羽が好きだったのはこの辺。蝶蘭戦後半に深空達を送り出す櫻井。


作者は最初からこのシーンがクライマックスの映像として頭にあったのではないでしょうか。
この後の「見てて」の回も良かったんですけど、私はこちらが好きだな。
あと同じ回の斎賀那智。

斎賀は強くて見場も良い基本取っ付きやすいキャラですが、櫻井に対してガサツに振舞いつつも徐々に深める信頼そしてほのかな恋愛感情という人間性の部分も良く描けていたと思います。
櫻井や深空や和峯は作者が努力して考えて描いている感がありますが、この子は作者の中で自然に動いてますね。KAITO先生の次回作、主人公は斎賀が良いな。
何だか勝手に気になって注目して参りました『クロス・マネジ』ですが、第1話で「おっ!?」と引き込まれ、その後の展開を読んでいって「大丈夫かいなこれ?」と首を傾げてたら後半になって調子を上げ、終盤に渾身の名場面が出てきて綺麗にまとめ上げられた感じですね。短いながらも作者が描きたかった事は全部描き尽くして爽やかに終わって行けた幸福な作品だったのではないでしょうか。