さて本題は昨年秋から連載の『クロス・マネジ』(作:KAITO)ですが豊口深空以下藤丘高校女子ラクロス部の面々は現在ティーンズマッチ決勝大会で強豪・蝶蘭女学院との決戦の最中です。とにかくラクロスを楽しもうというスタンスの深空たちは男子マネージャー櫻井玄哲(こちらが主人公!)の指導下、各自の長所を伸ばす形で成長してきました。しかし冷酷な勝利至上主義で経験も圧倒的に豊富な蝶蘭女学院の前に策が一つ一つ封じられ先制点を奪われてしまい………という展開です。
片羽、ジャンプの掲載順から作品の質を論じることはしませんが作品人気の指標としては冷酷に受け止めなければならないわけで、長らくテールエンダーを務めることとなった『クロス・マネジ』もおそらく現在の蝶蘭女学院戦をクライマックスに単行本4巻で物語を終えて行くと思われます。例えるならば『アイシールド21』が最初の対戦で大敗した王城ホワイトナイツと進さんにとりあえず一矢報いて終わってしまうようなもんでしょうか。不人気の要因としてはまず少年誌なのに女性誌的な絵柄、そしてスポーツものなのに題材の競技に対する掘り下げ不足と容易に指摘してしまえるのが残念です。
しかしながら連載を見ているとこのKAITOという作者がまだ気持ちの上では負けていないというか、蝶蘭女学院戦も一手一手丹念に展開を考えながらこの物語をなんとか自分の気の済むように描ききってやろうという真摯さや熱さは伝わってきます。深空と同様、作者が苦戦を楽しんでいるフシがありますね。
さらに言えば作者の描きたかったのがラクロスよりも櫻井と深空のドラマと考えれば本作は与えられた使命を全うしつつあるわけで、単行本4巻という尺も適切なのかも知れません。櫻井と同様、作者も案外冷静に物語を結末に向けて運んでいるんじゃないでしょうか。短い物語になるとしても綺麗に有終の美を飾って欲しいものです。
実のところ片羽、『クロス・マネジ』を読んでいて想起したのがフジテレビの1996年のドラマ『白線流し』です。このドラマの第一話、全日制の高校生の酒井美紀が教室の机の星座の落書きを見てそれを彫った定時制の長瀬智也に興味を持ち、やがて互いに魅かれていくという独創的でロマンチックな幕開けでした。しかしその後は仲間たちも交えた陳腐で糞真面目な青春群像劇に堕してしまいます(それでも何故か続編は沢山作られた)。なので片羽、同作の脚本家・信本敬子も当時全然評価していませんでした。
しかしそんな信本敬子が2年後に世に送り出すのが『カウボーイ・ビバップ』ですよ。あのスタイリッシュでハードボイルドなSFアニメの快作ですよ。当時『白線流し』がどうやったら『カウボーイ・ビバップ』に化けるのかと驚きましたが、信本敬子が本当に作りたかった作品が『カウボーイ・ビバップ』で『白線流し』は通過点、実績作りのためのお仕事だったと考えればしっくり来ますね………あくまで憶測ですが。
『クロス・マネジ』も魅力的な第一話を持つ青春ドラマなのでこれが『白線流し』だとすればKAITOは遠からず『カウボーイ・ビバップ』的な大作をものにするんじゃないかと片羽勝手に期待しとるわけであります。