2013年04月12日

『アンナ・カレーニナ』 〜これはひどい〜

 シナリオライターのブログなのに気が付くと映画の記事が全然なかった。というわけで一つ公開中の映画について語ってみたいと思います。本日のお題は『アンナ・カレーニナ』(2012年 監督:ジョー・ライト 脚本:トム・ストッパード)トルストイのロシア文学作品の映画化です。

 あらすじはというと政府高官の妻アンナ・カレーニナが若き将校ヴロンスキーと出会って不倫関係となり、社交界で後ろ指差されながら家庭を捨ててヴロンスキーの元へ走るのですが正妻にはしてもらえず世をはかなんで列車に飛び込むというお話です。並び称される『戦争と平和』『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』と比べて文章表現が映像的で読みやすいので片羽もお勧めです。

 そんな有名原作をキーラ・ナイトレイジュード・ロウ主演で、宣伝によれば『レ・ミゼラブル』のスタッフが制作するというのだからそれはもう豪華絢爛驚天動地の傑作であろうと思って片羽は母親まで誘って映画館へ出向きました。

上映開始から1分後には襲ってくる違和感。なんだか古めかしい劇場のステージ裏みたいな場所で物語が始まったのですが、まあ序盤だけの演出だろうと思っていたら行けども行けどもペテルブルグやモスクワは画面に出て来ません。それらの風景が板壁に油彩で描かれた書き割りのステージ、あるいはステージ裏、ソデ、楽屋、キャットウォーク(舞台の上の照明なんかを取り付ける足場)なんかでキーラ・ナイトレイその他の俳優たちが何やら『アンナ・カレーニナ』らしきものを演じる画面が続きます。

 片羽は頭痛がしはじめ隣の母親が寝息を立て始めた頃にアンナが幼い息子とHOゲージっぽい鉄道模型で遊ぶシーンが出てきて、19世紀末にしては随分なオーバーテクノロジーだと思っていたら次のシーンに無理矢理繋がり、アンナが所用にてペテルブルグからモスクワへ移動するのですがその汽車が臆面もなく鉄道模型で表現されていました。

 この後またしても書き割りのモスクワでアンナはヴロンスキーと出会い、恋に落ちて不倫のドロドロが始まります。が、この辺でようやく書き割りでないロケーションにカメラが出ます。アンナとヴロンスキーの痴態を他所に堅実に領地を経営し家族愛にも恵まれる、『アンナ・カレーニナ』世界の良心担当とも言うべき田舎貴族、リョーヴィンの農場です。………本当に只の農場です。狩猟や草刈りのシーンはちゃんと屋外で撮影してますし、家も古い木造家屋(というか丸太小屋?)を使ってます。だからこの映画、リョーヴィン関連の箇所だけ説得力があるのです。

 さてアンナの不倫は社交界に知れ渡り夫にもバレてしまい、離婚するのしないのと揉めて苦悩するのですが、この辺なぜか何処かの庭園の樹木の迷路でロケしてます。迷う心を迷路で表現したのでしょうか?
 そのうちにヴロンスキーが競馬に出場して転倒し、足を折った愛馬を拳銃で撃って安楽死させる名場面なのですがこれすら書き割りの劇場内。まずパドックは劇場内にそれっぽく設えて本物の馬を歩かせ、アンナ達観客が二階席からそれを見下ろす形です。ここはまだ競馬場っぽく見えないこともない。
 しかし続いて競走のシーン。今度は劇場の観客席にアンナやその他の人物たちが座ってオペラグラスで前方のステージを注視、どこか黒いバックの馬場を走っている競走馬たちを眺めています。で、問題の落馬のシーンになるとヴロンスキーの乗った白馬が劇場のステージから観客席へ転げ落ちてきて、アンナの目の前でヴロンスキーは白馬を射殺します。
 その後も書き割りの中でアンナの離婚はどうにか成立しヴロンスキーとの新生活が始まるのですが正妻にはしてもらえず、世をはかなんで列車に飛び込みます……………ただしキャットウォークから。

 そして最後を締めるのはアンナの死で自責の念に駆られ死に場所を求め戦地へ向かうヴロンスキーと、彼を見送り家族愛に生きる決意を新たにするリョーヴィン………………の筈ですがこの映画のラストシーンは劇場のステージと観客席の一面に設えられた草原でアンナの息子と娘(ヴロンスキーとの子)が遊び、別れた夫が2人を寂しげに見つめるという謎仕様でした。

 まー制作費が大幅に足りなかったのだろう、その中でよく頑張ったと好意的に解釈したいですがこれなら舞台劇として上演しやがれというのが正直な感想です。だって『アンナ・カレーニナ』ですよ?過去に何度も映像化された有名作品ですよ?それを一見して安普請の書き割りやらキャットウォークやらで撮影するとは暴挙というもの。
 暴挙といえばディカプリオの出ていた『ロミオとジュリエット』も舞台が現代のブラジルでモンタギューもキャピュレットもギャング団になってて面食らいましたがあそこまで気合を入れて作りこんでいれば独自の作品世界ということで許せます。それに比べて今回の『アンナ・カレーニナ』は単なる努力不足です。
 もし『アンナ・カレーニナ』を原作読むのは大変そうだから映画で済ませたいという方がいたら1997年のソフィー・マルソー主演の『アンナ・カレーニナ』をお勧めします。あれが完全版です。そして絶対に2012年版は観てはいけません。


posted by 片羽國雄 at 04:39| Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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