2013年11月29日

『セント・オブ・ウーマン』 〜スレード中佐の(?)モンディアル〜

 日本人にはほとんど関係ないですが北米じゃ感謝祭の週末なので片羽國雄心の映画『『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』の話でもしましょうか。

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1/43モンディアルとMr.ジョン・ダニエル…じゃなかったジャック・ダニエルと。
それにしても当時21歳のガブリエル・アンウォーの究極の美しさ!
いや片羽めは『バーン・ノーティス』のフィオナも愛しとりますよ。
………………………………でもねぇ………………………………
………男だったらこの21歳の背中に触りたいですよ………ねぇ?



 『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』(原題: Scent of a Woman)は1992年に制作されたアメリカ映画で、感謝祭の連休が描かれています。感謝祭は11月の最終木曜日ですが翌金曜日も会社はお休みにして木金土日の4連休にして家族と七面鳥を食べたりクリスマス・プレゼントを見つくろったりする、アメリカ人にとっては大事な休暇です。お盆がこの時期にあったらこんな感じなんでしょうかね?感謝祭が描かれた映画というと他に『大災難P.T.A』という傑作がありますが日本の連休と同じく移動が大変そうです。
 さて『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』の主人公チャーリー・シムズ君(クリス・オドネル)は全寮制の名門高校に通っているのですが経済的に裕福ではない奨学生で、せっかくの感謝祭の連休もアルバイトをせねばなりません。見つけたアルバイトは盲目の退役陸軍軍人で姪の家に隠居中のフランク・スレード中佐(アル・パチーノ)のヘルパーで、バイト料は悪くないのですが当の中佐はジャック・ダニエルをのべつまくなしカパカパ飲み続ける気難しい毒舌家で先が思いやられます。
 感謝祭前日、高校ではお金持ちのボンボンの級友たちが校長の愛車ジャガー・XJSをミルクまみれにする悪戯をはたらき、一部始終を目撃したチャーリーは校長から犯人を密告しろと言われて大弱り。密告すればハーバード大への推薦、断れば退学の究極二択を迫られたまま連休に突入するのですが、今度は中佐が姪に内緒でニューヨークへ旅行すると言い出しチャーリーも同行させられてしまいました。
 ニューヨークに着いた中佐は高級ホテルのスイートルームに投宿し、食事は高級レストラン、移動は貸切リムジンと豪遊を開始します。飲み食いは毎回ご相伴に預かり上等のスーツまで仕立ててもらったチャーリーも中佐の度を越した散財に不安を覚えるのですが、そのうちに中佐がなんと拳銃自殺をほのめかします。どうやらスレード中佐は視力を失い栄職も失った己の人生に絶望し、この旅で有り金を使い切って死ぬつもりのようなのです。
 昼はホテルのラウンジで隣席の美女ドナ(ガブリエル・アンウォー)とタンゴを踊り、夜は最高の美女(詳細わかりませんがVIP御用達のプロの女性だったと思われます)を抱いてスッキリしてしまったスレード中佐は連休の最終日を虚脱状態で迎えます。思い残すことがなくなってしまった様子の中佐を見てチャーリーは自殺の危険性が高まったと思い、なんとかしようとドライブを提案します。
 ここでいよいよ登場するのがフェラーリ・モンディアルです!

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モンディアルT カブリオレ
(京商 1/64 フェラーリミニカーコレクション5)


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フェラーリ3のモンディアルTと。


 1980年に作られたモンディアルは308/328や348と同等の動力性能を持ついわゆる「スモールフェラーリ」なのですが、売りとしては2+2の4座席であること。家族でも乗れるわけで走行性能よりも居住性を重視したフェラーリなわけですね。日本のスポーツカーでも同車種に2シーターと2+2が設定されていてお父さんがスポーツカーを買いたいけど2シーターは嫁が許してくれない、でも2+2なら家族4人でも乗れるからギリギリOKみたいなノリありますよね。純粋なスポーツモデルではないからか京商のフェラーリコレクションでも不人気のようでリサイクルショップに行けばカブリオレ・屋根付きともにかなりの高確率で出会えます。
 さてチャーリーが中佐にドライブを提案した理由なんですが、往路の飛行機の中で中佐がフェラーリ好きと発言していたからです。ファーストクラスでジャック・ダニエルを飲みながら猥談を繰り広げた中佐にチャーリーは「本当に女好きなんですね」とあきれ返るのですが中佐の答えは

「ああ、何よりも好む!」
「かなり下がって2番目に好むのは………フェラーリだ


 にわかに生気を取り戻した中佐とチャーリーはフェラーリのショールームを訪れ、購入するから(と嘘をついて)試乗をしたいと申し出るのですが、熟練セールスマンの“たそがれオジン”フレディが立ちはだかります。高価な車を初対面の客に試乗などさせたくないし、試乗サービスなんかしなくても買ってくれる客は大勢いるというのです。

「これはフェラーリです。自動車産業界で作られた最高の車ですよ」

「ここで私何と呼ばれていると思います?…たそがれオジン(gray ghost)。それでも窓際に行かされないのは、若い連中よりはるかにフェラーリを売るからなんです。私は東でも西でも国中で知られている。フレディ・ビスコを知らない人はいませんよ。フェラーリが入荷すれば、その日に売ってしまう!」

対する中佐は翌日の即金購入をもっともらしくほのめかした上、手付け金を払うことにしました。

「2000ドル。取ってくれないと私泣きます。…私もたそがれオジンだ」

 …試乗に20万円!なんせもうすぐ死ぬ気なんだから怖いもんなしです。
ともあれこれでフレディさんも折れて、モンディアルを借りることができました。

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ちなみにこの時ショールームにはモンディアルの他にF40と348と512TRが置いてありました。
フレディさんは原語のセリフで“Testarossa”と口走っていましたが、1992年に512TRじゃなくて84年型のテスタロッサが新車で売られていたのでしょうか?それともフェラーリ社内で512TRをテスタロッサと呼ぶことがあったのでしょうか?ちょっと気になります。


 ようやく借り出したモンディアルのハンドルを握るのはチャーリー。なんせ中佐は盲目なのですから自動車を運転できるわけがありません。
 免許があるとはいえ高校生のチャーリーの運転はぎこちなく、すぐにエンジン回転数が落ちてしまうのですが中佐からダブル・クラッチのやり方を教わって一安心です。

「ニュートラルにしてから、セカンドに入れて、クラッチを離す」

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ここからIXOの1/43で。
アシェットの「フェラーリコレクション」だったと思いますが入手経緯は失念しました。
車内はこんな感じということで。


 人気ない裏路地で密かにドライバー交代し、中佐がいよいよ憧れのフェラーリを運転することになります。最初は助手席のチャーリーにステアリングの補佐を受けながら低速でモンディアルを転がす中佐でしたが、そのうちにアクセルを踏み込んで全開走行を始めてしまいます。チャーリーは顔面蒼白でやめさせようとするのですが

「足が言う事聞かない」

「…騒ぐなチャーリー。このギアに入れてみよう!」

「OK。じゃ、ちょっとこいつの曲がりっぷりを見てみよう!」

「言うんだぞ。どこで曲がればいいか。…曲がり角はどこにある?3時方向?2時方向?45度角?右向け右?」

「Whoo-ah---!やった!やったぞチャーリー!俺もまだまだ捨てたもんじゃないぞ!」

「気に入った!気に入ったぞこの車!」


 しかしながらおいであそばしたNYPD。
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 中佐とチャーリーのモンディアルは90度カーブを2回曲がった直後にNYPDのダッジ・ディプロマットに見つかって停車させられてしまいました。

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 パトカーの警官の測定では時速128kmを出していたというモンディアル。視力を失って5年になる中佐に運転免許のある筈がなく、重大違反で即逮捕の大ピンチです。呼気を調べたらジャック・ダニエルも出たかも知れん。
 しかしそこは我らが中佐。免許証はフェラーリのディーラーに預けてきたと言い張り、盲目はおくびにも出さず「…ゴア警察官。あなたの顔見覚えがあるんですが。ダナンの士官クラブにいませんでしたか?」などと視力のあるふりを演じきって見事に見逃してもらいました。
 それにしてもフェラーリはよくも自社の車が視覚障害者の無謀運転に用いられる描写を許したものです。しかしおかげでスレード中佐の豪放磊落さや自殺願望が物凄くよく描かれた名場面が生まれました。企業が文化に貢献するとはこういう事ですよ。日本の自動車メーカーはこんなシナリオ絶対許さないでしょうね。

 このダッジ・ディプロマット・NYPDポリスカーの1/43ミニカーですがモーターマックスが映画『ユージュアル・サスペクツ』の序盤のシーンを再現したジオラマセットの車でした。
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NYPDは車両のモデルアップに際しライセンシーを要求するのですが、『ユージュアル・サスペクツ』は警官がポリスカーを使って組織犯罪に加担する状況だったためかNYPDの公認がなく、このミニカーもエンブレムなど簡素化されたNYPD風の車にされています。

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しかし70年代〜90年代仕様のブルー&ホワイトの威厳あるカラーリングは雰囲気良好に再現されています。映画だと『タクシードライバー』(1976年)あたりから『フォーン・ブース』(2002年)までこの塗装でしたね。これぞニューヨーク!

 ともあれこれで中佐とチャーリーのドライブは終了するのですが、こうなると本当に中佐はこの世に未練がなくなってしまいました。3日暮らしたホテルのスイートに舞い戻った中佐はいよいよ拳銃自殺を決行しようとするのですが、対するチャーリー一緒に死のうと拳銃を突きつけられながら最後の説得。

「死にたかないだろう?」
「中佐もね」
「その理由を教えてくれ。一つでいい」
「…二つ言うよ。タンゴが踊れるし、運転が誰よりも上手い」


 ドナとのダンスとモンディアルでの暴走。そんなしょうもない事であれ自分の価値、生きる意味を若者に提示された中佐は自殺をあきらめ、チャーリーと共にリムジンでボストンに戻ります。休暇明けの高校で校長のジャガー汚損事件の懲罰集会が予定されており、チャーリーを出席させてやらねばならないのです。
 この休暇の間、折に触れチャーリーの抱えた「友を売るべきか売らざるべきか」の葛藤を聞いてきた中佐はとっとと売っちまって学業に励み親孝行しろとアドバイスしてきたのですが、事ここに至ってチャーリーが黙秘を貫く決意だと悟り、ならばここまでと高校の前でバイト料を支払って別れます。
 懲罰集会で全校生徒の前に引き出されたチャーリー。校長はジャガー汚損を怒りながらも富裕層の子弟である実行犯一味を罰したくはなく、その名を最後まで白状しなかった貧乏学生のチャーリーに全責任を負わせて退学させ事件の幕引きを図ろうとします。
 そんな土壇場でチャーリーの保護者を名乗り懲罰集会に乱入してきたスレード中佐。この後5分間におよぶ大演説をぶって全校生徒と校長以外の全教員の心を鷲掴みにします。かくして無罪放免を勝ち取って学校に残れたチャーリーと、自身の現状を心静かに受け入れて姪の待つ家に帰るスレード中佐。それぞれの人生は続くのでした。

 片羽この映画公開当時の20歳頃に観た際は少しも面白くなくて寝てしまったのですが、人生の澱がそれなりに貯まった30歳前後のある年末に酒飲みながら深夜テレビで最後まで観たら心から感動し、スレード中佐のような洗練された豪放磊落な男になりたい、いざという時には守るべきものを守れる強さを身に着けたいと願ってその後の人生を生き直しはじめました。夢破れて全てを失ったとしてもその時は中佐のような豪遊ツアーを“another plan”含めて敢行すればいいやと開き直ったりしてね。まあ昔の話です。
 それにしても片羽の人生の節目節目にはいつもフェラーリ使いがいて道を教えてくれました。北野晶夫ジャン=アレジ剣=フェラーリ(笑)、そしてスレード中佐。まあ幾分古いフェラーリばかりなんですが、まだこれからも片羽を導いてくれるフェラーリの名手が出現してくれることを心から願います。…いや、今度は俺がフェラーリに乗って若人を導かねばならんかな…?



↓↓↓おまけ。中佐の大演説。野沢那智版。↓↓↓

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posted by 片羽國雄 at 03:02| Comment(2) | ミニカー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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